血液脳関門(blood-brain barrier)とは??

こんにちは!血液脳関門ってご存じですか?

解剖学を勉強していると血液○○関門って用語がちらほら出てきます(例、血液精巣関門、血液網膜関門など)。

血液と脳の間の関門?なにそれ…。と学生の時に思った覚えがあります。今回はそんな血液○○関門のなかでも脳に関する血液脳関門についての記事を書いてみようと思います!

まずは神経の概要からお話します!

中枢神経(脳・脊髄)

脳や脊髄といった中枢神経はニューロン(神経細胞)グリア細胞(支持細胞)から構成されます。

〇ニューロン(神経細胞):情報の伝達や処理を行う。

〇グリア細胞(支持細胞):ニューロンを保護したり、栄養物資が行き渡るように調節したり、免疫に関与したりしています。アストロサイト(星状膠細胞)オリゴデンドロサイト(稀突起膠細胞)ミクログリア(小膠細胞)など

今回の血液脳関門で重要になるのはアストロサイト(星状膠細胞)

中枢神経に対する血液供給

中枢神経を構成しているニューロン・グリア細胞は、当然ながら血液から栄養や物質を供給されています。しかし、一般の細胞との栄養供給との仕組みが大きく異なります。

どんなところが違うの?

では、一般細胞の栄養の供給の方法を見てみましょう!図1の左側を見てください。毛細血管を構成する血管内皮細胞には隙間、基底膜にも小孔が存在します。毛細血管では、O₂やCO₂といったガス交換、電解質(Na⁺、K⁺)、グルコース・アミノ酸などの物質が交換されます。また、白血球などは小孔をすり抜けるように移動(白血球の遊走)し、低分子の化合物は小孔を通過します。

一方、神経細胞ではどうでしょう?図1の右側を見てください。血管内皮細胞の隙間はピッタリと結合し物質を通しにくい構造となっています(この部位をタイトジャンクションと呼ぶ)また、基底膜も連続した状態です。一番大きな違いは毛細血管周囲にアストロサイト(星状膠細胞)が覆っているところです。アストロサイト(図2)は突起で毛細血管を覆い、内皮細胞と協力してバリア機能を果たします。このような構造により、血液構成成分や薬物の中枢神経への侵入や、脳内産生物質の流出を防いでいます

※例外、一部の脳器官(視床下部・下垂体・松果体など)では、血管内皮細胞は密着せず、物質の移動は比較的自由である。

図1.脳・脊髄の毛細血管とその他臓器の毛細血管の違い
図2.アストロサイト(星状膠細胞)の構造

~血液脳関門の発見の経緯~

1885年、細菌学者のPaul Ehrlich(ポール・エールリッヒ)がウサギの血管内に色素を注入したところ、多くの臓器は染色されたが、中枢神経だけ染色されなかった。➡中枢神経には色素を吸収する成分がないのか??

1913年、Edwin Goldman(エドウィン・ゴールドマン)が脳室内に色素を注入したところ、中枢神経は染まるが、他の臓器は染まらなかった。➡脳と血管の間には色素を隔離する構造がある!

これらの実験から血液脳関門の発見につながった。

なぜ他の細胞と構造が違うの??

なぜ、中枢神経と他の臓器では構造がちがうのでしょう?

おそらくですが、中枢神経がカラダにとって重要な器官だからです。血液中を流れる有害物質が神経細胞に影響した場合、著しいQOLの低下を導きます(中枢神経が障害された場合、死に直結する可能性もある)。そのため、血管内皮細胞を密着させ、アストロサイトでバリアを張ることで、中枢神経の恒常性を維持することができると考えられます!

2022年にはこんな報告があります!

“Association between vascular endothelial growth factor-mediated blood-brain barrier dysfunction and stress-induced depression”

➡血管内皮増殖因子を介した血液脳関門機能障害とストレス誘発性うつ病の関連性

〇うつ病患者において血漿中の血管内皮増殖因子(VEGF)濃度が高いと血液脳関門の機能が低下していることを明らかにしました。

〇慢性ストレスを受けたうつ病のモデルマウスでは、血液脳関門の機能が低下しており、そのメカニズムとしてVEGFが関与することを明らかにしました。

面白いですね!うつ病などの疾患にも血液脳関門が関与しているようです。

ストレスを受け続けると、適切な判断ができなくなるのは血液脳関門が影響している場合もありそうですね!

適度な休憩をとって、ストレス解消しましょう!

今回は以上になります!ありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次