症例問題①

こんにちは!今回は症例問題についての記事です!

症例問題は柔道整復理論の分野だけでも20問(36%)出題されます!

症例問題の正答率を上げるには、①とにかく沢山問題を解くこと②解いた問題をしっかり解説し、どの角度から聞かれても答えられるように準備することが大切です!

症例問題①

12歳女性。スポーツは体操競技(競技歴は7年)。段違い平行棒の練習中、右肘関節に疼痛を自覚するも、練習を継続した。1か月後練習中に強い疼痛を感じたため、来院した。右肘関節の可動域は伸展-5度、屈曲135度、健側は伸展10度、屈曲140度であった。右肘関節では伸展最終域での疼痛があり、上腕骨小頭部に圧痛を生じた。超音波診断装置で肘関節外側部を評価したのが以下の図である。

最も考えられる疾患はどれか。

1.上腕骨外側上顆炎

2.肘関節後外側回旋不安定症

3.上腕骨内側側副靱帯損傷

4.離断性骨軟骨炎

症例問題解答

答えは④離断性骨軟骨炎です。

症例問題解説

離断性骨軟骨炎

離断性骨軟骨炎は、関節軟骨を支える軟骨下骨が、何らかの原因で壊死し、関節内の骨軟骨組織が損傷したりはがれたりする疾患です。膝関節や肘関節、足関節などに好発します。好発年齢は10代です。肘関節の離断性骨軟骨炎は野球肘の外側型として紹介されることが多いため野球の競技歴がある人にしか発生しないと勘違いしてしまいがちですが、他の競技でも発生します。(発生頻度が高いのは野球の投手)

投球動作や手関節・前腕からの軸圧ストレスが過剰に生じると橈骨頭と上腕骨小頭が衝突して、離断性骨軟骨炎が生じます。症状は、肘関節外側部の疼痛可動域の低下があります。超音波診断装置(エコー)やレントゲン、MRIなど画像診断装置での評価が可能です。

問題の画像は超音波診断装置で肘関節外側部を映しています。⇩正常であれば、上腕骨小頭の部分が綺麗な半球形に見えます。

上腕骨外側上顆炎

上腕骨外側上顆炎はテニスのバックハンドストロークや手関節を多く用いる作業(家事やパソコン作業など)で多くみられます。疼痛部位は上腕骨外側上顆付近のため、今回の問題と近いポイントとなるが、肘関節可動域の減少や超音波診断装置で上腕骨小頭の異常などはみられません。

●上腕骨外側上顆炎の特徴

上腕骨外側上顆炎はテニス肘とも呼ばれる(バックハンドストローク時に痛みが生じるため)。スポーツや日常生活動作で前腕の伸筋群(特に短橈側手根伸筋)の起始部で変性を起こしたり、骨膜の変性を生じたりする。疼痛誘発テストとして、椅子テスト(Chair test)、手関節伸展テスト(Thomsen test)、中指伸展テスト(Middle finger extension test)などがある。

肘関節後外側回旋不安定症(PLRI)

肘関節後外側回旋不安定症(PLRI)は靱帯損傷によって、関節の弛緩性が生じ、ある運動によっては橈骨頭が脱臼・亜脱臼をする病態です。今回の損傷では契機となる靱帯損傷がない点、超音波診断装置で上腕骨小頭に障害がみられる点から可能性が低いことを考えられると良いと思います!

●肘関節後外側回旋不安定症(posterolateral rotatory instability : PLRI)の特徴

外側側副靱帯複合体※¹損傷や機能不全による肘関節後外側回旋性の不安定症。本症はlateral pivot shift test(肘関節に軸圧を加えながら回外、外反すると橈骨頭が後外側に脱臼又は亜脱臼する)が陽性となる。PLRIテストも陽性となる※²。肘関節脱臼後や上腕骨外顆骨折などの外傷後にも生じる。

※¹外側側副靱帯複合体➡橈側側副靱帯、外側尺側側副靱帯、輪状靱帯からなる。

※²PLRIテスト➡肘関節伸展位から前腕回外位で外反強制しながら軸圧を加えて屈曲していくと,約 20~40̊ 屈曲位で脱臼 または亜脱臼を誘発する。

肘関節内側側副靱帯損傷

内側側副靱帯損傷は今回の選択肢の中で唯一、内側部の損傷。体操競技という観点で言えば発生頻度は高いです!しかし、圧痛部位・発生年齢・超音波診断装置での評価から除外しなくてはいけません!

●内側側副靱帯損傷の特徴

瞬間的に損傷するものと繰り返しの力で損傷するものがあります。転倒した際に肘関節を過伸展強制されたり、外反強制されることで、肘関節の内側側副靱帯や前方関節包が損傷される可能性があります。症状は肘関節内側(内側側副靱帯部)に圧痛、腫脹などがあり、痛みにより完全伸展や完全屈曲ができないことがあります。

解き方のポイント!(こんなところに注目してみよう!)

12歳女性【小児での損傷➡骨端線閉鎖前、損傷では骨>関節が多い】。スポーツは体操競技(競技歴は7年)➡【体操競技は上肢・下肢ともに負荷が多いスポーツ】。段違い平行棒の練習中、右肘関節に疼痛を自覚するも、練習を継続した。1か月後練習中に強い疼痛を感じたため➡【継続する痛み・痛みの悪化】、来院した。右肘関節の可動域は伸展-5度、屈曲135度➡【健側と比較して関節の可動域が減少している】、健側は伸展10度、屈曲140度であった。右肘関節では伸展最終域での疼痛があり、上腕骨小頭部に圧痛を生じた。超音波診断装置で肘関節外側部を評価したのが以下の図である。



⇧上腕骨小頭の骨不整がみられる。

この文章だけでもこれだけのヒントが隠れています!症例問題を解く際には文章に隠れているヒントを少しでも見つけて解いてみましょう!

過去問でも離断性骨軟骨炎の問題は出題されてます!このタイミングで似たような問題を沢山解こう!

引用文献

1.Teruya S, Ogawa T, Yamada H, Tsuge H, Michinobu R, Ikeda K, Hara Y, Kamada H, Yamazaki M, Yoshii Y. Detection of Factors Related to the Development of Osteochondritis Dissecans in Youth Baseball Players Screening. Diagnostics (Basel). 2023 Dec 3;13(23):3589. doi: 10.3390/diagnostics13233589. PMID: 38066830; PMCID: PMC10706373.

2.面谷透, 高橋憲正.体操競技による肘関節離断性骨軟骨炎.臨床スポーツ医学:Vol.39, No.2(2022-2)

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