こんにちは!
今回は必修問題の柔道整復分野【定型的鎖骨骨折の診察・整復】の問題になります!
定型的鎖骨骨折の診察・整復の分野は過去6年間で9問出題(毎年1~2問)されています。
過去の問題&オリジナル問題を作成したので、解いてみましょう!
定型的鎖骨骨折の診察・整復の問題
印刷、またはダウンロードしてipadでやるのがおススメ!
解答&解説
問1.定型的鎖骨骨折でみられないのはどれか(第28回)
- 屈曲転位
- 延長転位
- 側方転位
- 短縮転位
解答&解説
正解は2番の延長転位です。定型的鎖骨骨折でみられる転位は側方転位・屈曲転位・短縮転位です。
転位の原因も覚えましょう!
側方転位(二次性転位)➡遠位骨片は上肢の重量で下方に転位します。これにより近位骨片長軸に対して、側方に転位している状態になります。
短縮転位(二次性転位)➡遠位骨片は大胸筋・小胸筋の作用により、胸骨方向(大胸筋の起始)に牽引されます。よって短縮転位となります。
屈曲転位→受傷時の外力により、鎖骨中・外1/3境界部に上方凸の変形がみられます。転位として屈曲転位となります。
※転位の種類(柔道整復理論編P33参照)
- 側方転位:骨折して一方の骨片が骨長軸上から側方に移動したもの
- 屈曲転位:一方の骨片が骨長軸に対して一定の角度をもって移動したもの
- 捻転転位:一方の骨片が骨長軸上で一定の回旋を生じたもの
- 延長転位:骨折端が骨長軸で離開して骨の長さが増加したもの
- 短縮転位:骨折端が骨長軸上で短縮して、骨の長さが減少したもの
問2.鎖骨骨折の坐位整復法で誤っているのはどれか。(第29回)
- 患者は上肢を下垂する。
- 第1助手は後方に位置する。
- 第2助手は患側に位置する。
- 術者は前方に位置する。
解答&解説
正解は、1番の”患者は上肢を下垂する”です。上肢を下垂すると上肢の重量により、遠位骨片の下方転位増大や疼痛が出現する可能性があります。そのため第2助手が上肢を把持します。
坐位整復法は診察台または椅子を用いた鎖骨骨折の整復法になります。術者・第1助手・第2助手の3名で行う整復法なので、それぞれの役割をしっかり覚えましょう!
患者→診察台まはた椅子に端坐位(ベッドや椅子の端に腰掛け、足を床につけた姿勢)
第1助手→役割は胸郭の拡大により短縮転位の除去。患者の後方に位置して、膝頭をタオルなどで保護した脊柱部に当てる(第7胸椎付近)。両肩部を上前面、あるいは腋窩部に手を入れて両肩を後外方に引く。
第2助手→役割は下方に転位した遠位骨片の挙上。患側に位置し、患肢の上腕部および前腕部を把持して上腕を上外方に持ち上げる(肩甲骨の挙上と内転)。遠位骨片を近位骨片に近づける。
術者→役割は近位骨片と遠位骨片の適合。患者の前方に位置し、両手で両骨折端を把持する。第2助手の操作時に遠位骨片を近位骨片に適合させる。
問3.小児の鎖骨骨折で正しいのはどれか。(第29回)
- 転位が大きい。
- 楔状骨片を生じやすい。
- 強固な固定が必要である。
- 変形は漸次矯正される。
解答&解説
正解は4番の”変形は漸次矯正される”です。小児の場合は自家矯正能が高いため、変形があっても矯正されることが多い(捻転骨折・関節内骨折は除く。
~小児骨折の特徴~
- 骨膜が厚く強靭➡骨膜性仮骨の形成が旺盛。骨癒合が良好
- 骨は柔軟性に富んでいる➡完全骨折になりにくい。若木骨折・竹節状骨折に
- 骨端軟骨(骨端成長軟骨版)が存在➡骨端軟骨の骨折では成長障害も…
- 自家矯正が旺盛➡骨折で転位が残存しても自家矯正される可能性が高い。
問4.鎖骨骨折の整復法で第1助手の役割はどれか。(第30回)
- 胸鎖乳突筋の弛緩
- 短縮転位の除去
- 遠位骨片の挙上
- 体幹の把持
解答&解説
正解は2番の”短縮転位の除去”です。鎖骨骨折の坐位整復法の解説は問2を参考にしてください。
胸鎖乳突筋の弛緩➡頭部を患側に傾け、顔面を健側に向けることで弛緩する。
短縮転位の除去➡第1助手が両肩を後外方に牽引することで除去できる。
遠位骨片の挙上➡第2助手が上腕・前腕を把持し、上外方に挙上する。
体幹の把持➡体幹だけを把持することはないが、第1、2助手が両肩、上腕を把持することで安定化させる。
問5.定型的鎖骨骨折の来所時の肢位で誤っているのはどれか。(第31回)
- 顔面は患側に向けている。
- 肩幅は減少している。
- 肩が下垂している。
- 健側で患側上肢を支えている。
解答&解説
正解は1番の”顔面は患側に向けている”です。鎖骨骨折の疼痛緩和肢位は【頭部をやや患側に傾け、顔面を健側に向け胸鎖乳突筋を弛緩させて疼痛を緩和し、患側の肩は下垂し肩幅は減少する】である。実際に来所する際には、肩を下垂したままだと疼痛を誘発するため、健側で患側上肢を支えている。
問6.鎖骨骨折坐位整復法の助手の役割で誤っているのはどれか。(第32回)
- 患者の観察
- 患肢の保持
- 上方転位の除去
- 胸を張る姿勢の保持
解答&解説
正解は3番の”上方転位の除去”です。鎖骨骨折の整復法における助手の役割は遠位骨片の操作です。遠位骨片の転位は下方転位と短縮転位になります。整復法については問2の解説を参照してください。
問7.定型的鎖骨骨折で正しいのはどれか。(第33回)
- 転位は軽度なことが多い。
- 皮下出血斑は生じにくい。
- 直達外力による発生が多い。
- 肩関節運動で疼痛が強くなる。
解答&解説
正解は4番の”肩関節運動で疼痛が強くなる”です。肩関節の運動に一見鎖骨は関係ない?と思ってしまう方もいるかもしれないですが、鎖骨の動き(胸鎖関節・肩鎖関節)は非常に重要になります。なので、肩関節運動を行うことで鎖骨に動揺が伝わり疼痛が生じます。
転位は軽度なことが多い➡成人では転位が高度になることもあります。
皮下出血斑は生じにくい➡鎖骨は皮下に近いため、皮下出血斑が強くみられます。
直達外力による発生が多い➡介達外力による発生が多い(転倒し上腕・肩峰が地面に衝突)。直達外力による発生は少ない。
問8.定型的鎖骨骨折の坐位整復法で第1助手が行う肩部の牽引方向はどれか。(第33回)
- 前上方
- 上内方
- 後外方
- 後下方
解答&解説
正解は3番の”後外方”です!坐位整復法の解説は問2の参照してください。第1助手の役割は役割は胸郭の拡大により短縮転位の除去。患者の後方に位置して、膝頭をタオルなどで保護した脊柱部に当てる(第7胸椎付近)。両肩部を上前面、あるいは腋窩部に手を入れて両肩を後外方に引きます。
問9.定型的鎖骨骨折の坐位整復法で第2助手が行うのはどれか。 (第33回)
- 骨折部に直圧を加える。
- 患者の顔色の変化をみる。
- 患者の胸郭を拡大させる。
- 患側の前腕と手指を保持する。
解答&解説
正解は2番の”患者の顔色の変化をみる”です。第2助手は患側に位置し、上腕と前腕と把持し上腕を上内方に持ち上げます。患者の顔色をチェックできる位置にいるので、顔色の変化をみる必要があります。
骨折部に直圧を加える➡術者
患者の胸郭を拡大させる➡第1助手
問10.鎖骨骨折の坐位整復法で正しいのはどれか。(オリジナル問題)
- 第2助手は鎖骨遠位端部を把持する。
- 肩関節を外転方向に牽引する。
- 第1助手は膝頭を第4腰椎部に当てる。
- 術者は患者の前方に位置する。
解答&解説
正解は4番の”術者は患者の前方に位置する”です。術者は患者の前方に位置し、遠位骨片を近位骨片に適合させます。
第2助手が把持するのは上腕と前腕、鎖骨骨折の整復に患側上肢の牽引はありません。第1助手が膝頭を当てるのは第7胸椎付近です。
問11.定型的鎖骨骨折の特徴で正しいのはどれか。(オリジナル問題)
- 整復位の保持する固定は容易である。
- 小児の骨折では第3骨片を生じることが多い。
- 患側の肩幅は減少してみえる。
- 直達外力で発生することが多い。
解答&解説
正解は3番の”患側の肩幅は減少してみえる”です。定型的鎖骨骨折では大胸筋・小胸筋の影響により短縮転位が生じます。これにより肩幅が減少してみえます。
鎖骨骨折は固定後でも整復位の保持が困難で再転位を起こす可能性があります。小児の骨は柔軟性に富んでいるため、第3骨片を生じる可能性は低いです(不全骨折になりやすい)。鎖骨骨折は介達外力により発生します。
問12.定型的鎖骨骨折でみられる姿勢はどれか。(オリジナル問題)
- 頭部を健側に向けた姿勢
- 顔面を健側に向けた姿勢
- 患肢を挙上させた姿勢
- 胸郭が拡大した姿勢
解答&解説
正解は2番の”顔面を健側に向けた姿勢”です。鎖骨骨折の疼痛緩和肢位は【頭部をやや患側に傾け、顔面を健側に向け胸鎖乳突筋を弛緩させて疼痛を緩和し、患側の肩は下垂し肩幅は減少する】です。しっかり覚えましょう!
以上になります。定型的鎖骨骨折の診察・整復の問題は過去6年間すべて出題されています。特徴をしっかりつかみましょう!
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