こんにちは!今回は肩関節烏口下脱臼の診察と整復の問題です!烏口下脱臼の問題は過去6年間で最も出題数が多く、12問出題されています!
問題
解答&解説
問1.肩関節烏口下脱臼で正しいのはどれか。(第28回)
- 頭部は健側に傾けている。
- 上腕は軽度内転、内旋している。
- 整復前に鎖骨下動脈の拍動を確認する。
- 上腕外側の感覚障害の有無を確認する。
解答&解説
正解は4番の”上腕外側の感覚障害の有無を確認する”です。肩関節烏口下脱臼では腋窩神経・筋皮神経などの神経障害を合併する可能性があります。
腋窩神経➡運動枝:三角筋、小円筋、感覚枝:上腕外側の感覚
筋皮神経➡運動枝:上腕筋、上腕二頭筋、烏口腕筋、感覚枝:前腕外側の感覚
1.頭部は患側に傾けることが多い。
2.上腕は軽度外転(約30度)、内旋位を呈する。
3.整復前には橈骨動脈で拍動を確認する(腋窩動脈を損傷する可能性があるため、腋窩動脈より末梢で確認する)
理論編P304~305
問2.肩関節烏口下脱臼の外観と類似しているのはどれか。(第28回)
- 上腕骨解剖頚骨折
- 上腕骨外科頚外転型骨折
- 上腕骨大結節単独骨折
- 上腕骨骨幹部骨折
解答&解説
正解は2番の”上腕骨外科頚外転型骨折”です。肩関節烏口下脱臼は肩関節軽度外転(約30度)、内旋位で弾発性固定されます。一方、上腕骨外科頚外転型骨折では近位骨片は軽度内転、遠位骨片は軽度外転位に転位し、肩関節外転位に見えます。これにより外観が類似します。 理論編P185、304
肩関節烏口下脱臼 | 上腕骨外科頚骨折 |
三角筋部の膨隆が消失 (骨頭が移動するため) | 三角筋部の膨隆が著明 (骨折による腫脹のため) |
肩峰の下が空虚になる | 肩峰下の骨頭が触知できる |
弾発性固定がみられる | 軋轢音を触知することがある |
問3.肩関節烏口下脱臼の整復で正しい組み合わせはどれか。(第28回)
- クーパー法 ―――― 挙上法
- コッヘル法 ―――― 回転法
- スティムソン法 ―― 槓杆法
- モーテ法 ――――― 吊り下げ法
解答&解説
正解は2番の”コッヘル法――回転法”です。コッヘル法は坐位で行う肩関節烏口下脱臼の整復法です。
~肩関節烏口下脱臼の整復法~
- コッヘル法(回転法)
- ヒポクラテス法(踵骨法)
- スティムソン法(吊り下げ法)
- クーパー法(槓杆法)
- ドナヒュー法(吊り下げ法)
- モーテ法(挙上法)
- ミルヒ法(挙上法)
- ゼロポジション法
理論編P305~306
問4.肩関節烏口下脱臼の症状で正しいのはどれか。(第29回)
- 上腕長の短縮
- 三角筋部の腫脹
- 水平位で弾発性固定
- 三角筋胸筋三角の消失
解答&解説
正解は4番の”三角筋胸筋三角の消失”です。三角筋胸筋三角は別名モーレンハイム窩とも呼ばれ、鎖骨前面の大胸筋鎖骨部と三角筋前部線維の起始の間にある間隙で橈側皮静脈が通過します。
1.上腕長(肩峰~上腕骨外側上顆)は短縮せず、鎖骨下脱臼では短縮する。
2.三角筋部は骨頭が移動するため、空虚となる。
3.烏口下脱臼では軽度外転位(約30度)で弾発性固定となる。水平位になるのは鎖骨下脱臼である。
理論編P304~305
問5.肩関節烏口下脱臼の合併症と症状の組み合わせで誤っているのはどれか。(第29回)
- 大結節骨折 ――― 肩関節外側の圧痛
- 筋皮神経麻痺 ―― 肩関節外側の感覚障害
- 腋窩動脈損傷 ―― 橈骨動脈の拍動消失
- 肩腱板損傷 ――― 肩関節の外転障害
解答&解説
正解は2番の”筋皮神経麻痺――肩関節外側の感覚障害”です。筋皮神経は前腕外側の感覚を支配します。筋皮神経麻痺になると前腕外側の感覚障害が生じます。運動枝は烏口腕筋、上腕筋、上腕二頭筋を支配します。
問6.肩関節烏口下脱臼の整復直後の確認で誤っているのはどれか。(第29回)
- 運動痛の有無
- 血管損傷の有無
- 神経麻痺の有無
- 弾発性固定の有無
解答&解説
正解は1番の”運動痛の有無”です。運動痛は整復前後どちらも見られます。血管・神経損傷の有無は必ず確認します(整復操作によって損傷していないか確認するため)。弾発性固定は脱臼の固有症状のため、整復後確認します。
実技編P223
問7.肩関節烏口下脱臼に対するコッヘル法で第2操作はどれか。(第30回)
- 外転
- 内転
- 外旋
- 内旋
解答&解説
正解は2又3の”内転、外旋”です。※複数回答問題になりました。ここではコッヘル法をしっかり覚えましょう!
~コッヘル法(回転法)~
①患者を坐位とし、助手に両肩部を固定させる。
②軽度外転位(弾発性固定)の上腕を長軸遠位方向に牽引しながら、側胸壁に接近させる(内転)
③牽引を持続し肩関節を外旋する。
④牽引を緩めず外旋位のまま、前胸壁滑らすように肘部を正中面に近づけながら前方挙上(屈曲)させる。
⑤患側手掌が顔の前を通り健側に来るように内旋する。
実技編P224
問8.肩関節烏口下脱臼整復後の確認で誤っているのはどれか。(第31回)
- 受傷機序を再現する。
- 骨頭の位置を触知する。
- 健側との外観を比較する。
- 関節の自動介助運動を行う。
解答&解説
正解は1番の”受傷機序を再現する”です。脱臼では整復後に受傷機序の再現をすると再脱臼の恐れがあるので、再現することはありません。
問9.反復性肩関節脱臼の要因でないのはどれか。(第31回)
- 初回脱臼が10~20歳
- 初回脱臼の短期間固定
- 上腕骨頭後外方の陥凹
- 関節窩前上縁骨折の存在
解答&解説
正解は4番の”関節窩前上縁の骨折の存在”です。
~反復性肩関節脱臼の要因~(理論編P307)
- 初回脱臼年齢10~20歳(軟部組織損傷やスポーツ活動が多くなるため)
- (骨性)バンカート損傷(関節唇損傷、関節窩前下縁骨折)
- ヒル・サックス損傷(上腕骨頭後外方の骨折)
※この問題を解くと、関節窩前上縁の骨折は反復性脱臼に”関係ない”と感じてしまうが臨床的には関節窩の一部が欠損しているため反復性脱臼になってもおかしくないと思われる。
問10.肩関節烏口下脱臼の合併症と症状の組み合わせで正しいのはどれか。(第32回)
- 大結節骨折 ――― 肩関節後方の圧痛
- 筋皮神経麻痺 ―― 前腕内側の感覚異常
- 腋窩動脈損傷 ―― 爪部の蒼白
- 肩腱板損傷 ――― 肩関節の伸展運動不能
解答&解説
正解は3番の”腋窩動脈損傷――爪部の蒼白”です。肩関節烏口下脱臼では腋窩動脈損傷を合併する可能性があります。腋窩動脈は上腕動脈➡橈骨・尺骨動脈と下行し、爪部の栄養に関与します。腋窩動脈を損傷することで、爪部が蒼白します。
1.大結節骨折では上腕骨の外側に圧痛がみられます。
2.筋皮神経麻痺では前腕外側部の感覚異常がみられます。
4.肩腱板損傷では肩関節の外転や外旋、内転、内旋運動が障害されます。
問11.肩関節烏口下脱臼と受傷時の外観が類似するのはどれか。(第33回)
- 肩峰骨折
- 肩甲骨頚部骨折
- 鎖骨遠位端骨折
- 上腕骨小結節骨折
解答&解説
正解は2番の”肩甲骨頚部骨折”です。肩甲骨頚部骨折は関節窩のすぐ近位部での骨折で解剖頚骨折と外科頚骨折(多い)に分けられます。頚部が骨折し、上腕骨頭ごと転位するため、肩関節前方脱臼との鑑別が必要といわれています。(理論編P180)
問12.肩関節烏口下脱臼に対するヒポクラテス法で誤っているのはどれか。(第33回)
- 足の外側縁を腋窩に当てる。
- 肩関節を内転、内旋で終える。
- 両手で上腕遠位部を把持する。
- 肩関節を外転、外旋位に牽引する。
解答&解説
正解は2番の”両手で上腕遠位部を把持する”です。ヒポクラテス法では両手で前腕遠位部を握ります。
~ヒポクラテス法(踵骨法)~(理論編P306)
①背臥位で患者に接して座り、踵および足の外側縁を患側腋窩にあて肩甲骨を固定する。
②両手で前腕部を握り、徐々に外転・外旋位に末梢牽引する。
③同時に足底部を入れて牽引し、足底部を支点として内転・内旋する。
問13.肩関節烏口下脱臼の整復法で上肢に重錘を装着するのはどれか。(オリジナル問題)
- スティムソン法
- ゼロポジション法
- コッヘル法
- クーパー法
解答&解説
正解は1番の”スティムソン法”です。スティムソン法は吊り下げ法とも呼ばれ、患者を腹臥位で寝かせ、患肢をベッドの端から下垂させ、重りをつけ下垂させると自然に整復される方法です。(理論編P306)
問14.肩関節烏口下脱臼の合併症で正しいのはどれか。(オリジナル問題)
- バンカート損傷は触診で評価が可能である。
- ヒル・サックス損傷は関節窩の骨折である。
- 小結節骨折を合併することが多い。
- 神経損傷の合併では前腕外側の知覚麻痺を呈することがある。
解答&解説
正解は4番の”神経損傷の合併では前腕外側の知覚麻痺を呈することがある”です。肩関節烏口下脱臼では腋窩神経や筋皮神経の損傷を合併することがあります。腋窩神経損傷では上腕外側部、筋皮神経損傷では前腕外側部の知覚障害がみられます。
1.バンカート損傷は関節唇損傷のため、触診での評価が困難。
2.ヒル・サックスは上腕骨頭の陥没骨折です。
3.肩関節烏口下脱臼では大結節の骨折を合併することがあります。
以上になります。
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